生産性と利益率を追いかけてきた僕が、ネギの掴み取りで思い出したこと

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農業ブログ

生産性と利益率を追いかけてきた僕が、ネギの掴み取りで思い出したこと

2025/12/28

正直に言うと、
これまでの僕は「生産性」と「利益率」を最優先に農業をやってきた。

どれだけ収量を上げられるか。
どれだけロスを減らせるか。
どれだけ人件費を抑え、作業を標準化できるか。

農業は甘くない。
感情論や理想論だけでは、簡単に立ち行かなくなる世界だということを、就農してから嫌というほど学んできた。

だからこそ、僕はBtoBを選んできた。
直接消費者に売るよりも、安定した数量を、決められた規格で、淡々と出荷する。
相手はプロ。話は数字が中心で、感情は極力排除する。

それが農園を成長させる最短距離だと思っていたし、実際それは間違っていなかったと思う。

でも今日、ネギの掴み取りイベントをやってみて、
自分でも少し驚くような感情が湧いてきた。

久しぶりに「お客さんの顔」を見た日

イベント当日。
朝から準備をして、ネギを並べて、お客さんを迎えた。

やって来るのは、家族連れが多かった。
子どもたちはネギを見て最初は戸惑いながらも、
いざ掴み取りが始まると、目を輝かせて笑っている。

「こんなに取れた!」
「重い!」
「今日これでご飯作るね」

そんな何気ない言葉を、久しぶりに真正面から受け取った。

BtoBでやっていると、
誰に食べられているのかを、強く意識する機会はほとんどない。

それは悪いことではない。
むしろ、安定供給という意味では、プロとして正しい姿勢だと思っている。

でも今日は違った。

目の前でネギを掴み、
それを袋に詰め、
「ありがとう」と言って帰っていく人たちがいた。

売上だけを見れば、正直もっと行くと思っていた

数字の話をすると、
10時から15時までで売上は66,000円。

正直に言えば、
「もう少し行くかな」と思っていた。

準備にかかった時間、
体力、
そして1万歩を超える歩数。

効率だけを見れば、
決して“良い商売”とは言えないかもしれない。

でも、不思議と後悔はなかった。

むしろ、
「今日は良い一日だったな」
と、素直に思えた。

それが自分でも少し意外だった。

忙しさの中で、忘れていた感覚

農業を仕事にしていると、
どうしても「回す」ことが最優先になる。

作業を遅らせないこと。
人を待たせないこと。
ミスを減らすこと。

常に頭の中は段取りと数字でいっぱいだ。

でも今日は、
その忙しさを少し忘れさせてもらった。

子どもと話し、
親御さんと話し、
「楽しかった、また来ます」と言われる。

その一つ一つが、
心の奥に静かに効いてくる感じがした。

実際に食べる人に直接売るということ

自分が育てたネギを、
実際に食べる人に直接手渡す。

当たり前のようで、
実はなかなか経験できないことだ。

「このネギで鍋やります」
「焼いても美味しいよね」
「子どもがネギ好きで」

そういう会話の中で、
自分の作っているものが「生活」につながっていることを、強く実感した。

これは、
卸先の担当者と価格交渉をしている時には、
なかなか得られない感覚だ。

BtoBを否定するつもりはない

誤解のないように言っておくと、
僕はこれからBtoBをやめるつもりはない。

効率を追い、
利益率を考え、
農園を持続させていくことは、これからも最優先だ。

感情だけで農業は続かない。
それは今も変わらない。

でも、今日のような日が
たまにあってもいいと思った。

数字だけでは測れない何かが、
確かにそこにはあった。

モチベーションの正体

農業を続けるモチベーションは何か。

売上。
利益。
規模。

それも間違いなく大事だ。

でも、
「ありがとう」
「美味しかった」
「また来ます」

この言葉が、
思っていた以上に自分を動かすことに、今日は気づかされた。

今日という一日を、忘れないために

この感覚は、
忙しさの中で簡単に薄れてしまう。

だからこそ、
今日感じたことを、こうして言葉に残しておこうと思った。

また明日からは、
いつものように効率を考え、
段取りを組み、
数字と向き合う日々が続く。

でもきっと、
今日のことは、
どこかで自分を支えてくれる。

最後に、今日来てくれた皆さんへ

最後に、
今日ネギの掴み取りイベントに足を運んでくださった皆さんへ。

年末の忙しい中、
後藤農園まで来てくださり、本当にありがとうございました。

ネギを掴んで笑っていた子どもたちの顔、
「今日のご飯が楽しみです」と話してくれたご家族の言葉、
ひとつひとつが、作り手として胸に残っています。

効率や利益だけを追いかけてきた僕にとって、
皆さんと直接触れ合えた今日の時間は、
想像以上に大きな意味を持つ一日になりました。

僕たちが毎日畑で向き合っているネギが、
誰かの食卓につながっていることを、
改めて実感させてもらいました。

今日いただいたこの気持ちは、
また明日からの農作業に、必ず返していきます。

今回のような形が、
いつ、どんな形で、次にできるかはまだ分かりません。
でも、今日の景色を見て、
「またやりたいな」と素直に思えたのも事実です。

その時はまた、
畑や直売で、ネギを通してお会いできたら嬉しいです。

本日は本当にありがとうございました