なぜ日本の食卓に並ぶゴマは「輸入品」ばかりなのか?
2025/08/14
なぜ日本の食卓に並ぶゴマは「輸入品」ばかりなのか?
日本の食卓に欠かせない、香ばしいゴマ。
和え物からドレッシング、
ふりかけに至るまで、
私たちの食生活に深く根付いています。
しかし、
皆さんはご存知でしょうか?
国内で消費されるゴマの、
実に99.9%以上が輸入品だという事実を 。
なぜ、
私たちは海外のゴマに頼っているのでしょうか?
この背景には、
栽培の難しさ、
グローバルな物流、
そして厳格な食品安全基準という、
複数の要因が複雑に絡み合っています。
1. 国産ゴマが少ない理由:手作業ゆえの非効率性
まず、国産のゴマが市場に出回るのがわずか0.1%以下
という驚きの現状から見てみましょう。
その主な理由は、
ゴマの栽培が非常に手間のかかる作業であることにあります。
ゴマの莢(さや)は、
熟して乾燥すると一斉に裂けて種が地面にこぼれてしまう
「裂莢性」という性質を持っています 。
このため、
収穫時期を逃してしまうと収量が大きく減ってしまいます。
この収穫適期は、
ゴマの下部の莢が開き始める直前のわずかな期間で、
短期間に作業を終える必要があります 。
このデリケートな収穫を確実に行うため、
多くの工程が今もなお手作業で行われています。
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収穫と乾燥:カマで株元から刈り取ったゴマを5~15株ずつ束ね、雨の当たらない場所で7~10日間、天日干しします 。鹿児島県の喜界島では、この天日干しの風景が「セサミストリート」と呼ばれ、島の風物詩となっています 。
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脱穀:十分に乾燥した後、ゴマの束をビニールシートの上などで棒を使って叩き、開いた莢から種子を落とします 。
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選別:種子を落とした後も、ふるいや風力を利用した唐箕(とうみ)という道具で、葉や茎の破片、軽い砂やチリを取り除く作業が必要です 。さらには、機械では選別できない極小の石などを、人の目で探してピンセットで取り除くといった、非常に手間と根気のいる作業も行われています 。
これらの手作業が、
ゴマ栽培全体の労働時間の半分以上を占める ため、
大規模な機械化が難しく、
国産ゴマの生産拡大を阻む大きな壁となっているのです 。
2. 輸入ゴマが主流となる3つの理由
国産が少ない一方、
国際的なサプライチェーンが日本のゴマ需要を支えています。
その優位性は、
以下の3つの側面から説明できます。
① 物流の効率性と安定性
年間約17万トン もの膨大なゴマを消費する日本にとって、
安定した供給源の確保は不可欠です。
主要な輸入元は、
ナイジェリア、
ブルキナファソ、
タンザニアといったアフリカ諸国で、
全体の7〜8割を占めます 。
南米のパラグアイからも多く輸入されています 。
これらの遠い国々から長時間かけて輸送されるゴマは、
品質を安定させることが極めて重要です。
焙煎という加熱処理は、
水分を除去して酸化やカビのリスクを低減し 、
長期間の保存を可能にするため、
この物流プロセスにおいて決定的な役割を果たしています 。
② 検疫をスムーズにする「焙煎」の魔法
輸入されるゴマには、
日本の植物防疫法に基づく厳格な検疫が課せられます。
加熱処理されていない生ゴマ(種子)は、
「発芽能力がある植物」と見なされるため、
発芽検査の対象になる場合があります。
この検査には時間がかかり、
通関手続きの遅延に繋がるリスクがあります 。
しかし、
焙煎という加熱処理を施すことで、
ゴマは発芽能力を失います。
これにより、
検疫がスムーズに進み、
迅速に国内へ供給することが可能になるのです 。
焙煎は、
美味しさを引き出すだけでなく、
国際貿易の効率を上げるための重要なステップでもあるのです。
③ 多重の食品安全管理体制
輸入品と聞くと、
安全性に不安を感じる方もいるかもしれません。
しかし、
日本の輸入食品に対する管理体制は非常に厳格です。
特に懸念されるのは、
特定のカビが産生する発がん性物質
**「アフラトキシン」です 。
焙煎はカビの発生を抑制する効果がある一方で、
一度生成されたアフラトキシンは
熱に極めて安定**であり、
通常の加熱調理では分解されません 。
そのため、
日本の輸入業者やメーカーは、
生産国での厳格な品質管理に加え、
輸入時にもモニタリング検査を徹底しています 。
このように、
生産から輸入に至るまで多層的なチェック体制が敷かれているからこそ、
私たちは安全なゴマを安心して口にすることができるのです。
まとめ:美味しさと安全を両立させる国際分業の成果
日本の食卓が輸入品のゴマに支えられているのは、
コストや利便性だけが理由ではありません。
栽培の難しさ、
国際貿易における物流の合理性、
そして何よりも消費者の安全を守るための厳格な品質管理が、
炒りゴマを「輸入品」という形で私たちの手元に届けています。
私たちが何気なく食べている一粒のゴマの裏には、
こうした多角的な努力と工夫が隠されているのです。