小さな農園が人を惹きつける──農業×ランチェスター戦略で描く“採用の勝ち筋”

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小さな農園が人を惹きつける──農業×ランチェスター戦略で描く“採用の勝ち筋”

2025/05/11

農業に人が集まらない理由を見直す

はじめに

どれだけ技術が進化しても、どれだけ販路を広げても、最後に必要なのは“人”です。作物は人がいなければ育たないし、農業の未来も人がいなければ続いていきません。

けれど現実には、農業に人が集まらない。仮に入社しても、数か月で辞めてしまう。求人広告や人材紹介に多額の費用をかけても、なかなか定着しない。

そんな現実を、僕も身をもって経験してきました。

でもあるとき、ふと思ったんです。

 

「人が集まらないのは“農業だから”じゃない。“戦略がない農業”だからだ」と。

 

そこで僕が取り入れたのが、“弱者の戦い方”として知られる「ランチェスター戦略」です。


 

採用にも「弱者の戦い方」がある

ランチェスター戦略の基本は、「強者と同じ土俵で戦ってはいけない」という考え方。

これは採用にもそのまま当てはまります。

 

  • 大手企業のような高待遇や知名度では勝てない

  • 求人広告に数十万円を出しても埋もれてしまう

  • 「誰でもいい採用」は、いずれ組織を壊す

 

つまり、小さな農園が大手企業や農業法人と同じように人を集めようとしても、勝負にならないのです。

だからこそ、「どんな人に来てほしいか」を明確にし、「その人だけに届くような採用戦略」を組むことが何より大切になります。


 

実践してきた「5つの採用戦略」

後藤農園では、次の5つの絞り込みを軸に採用戦略を構築しています。

 

1. 地域を絞る:地元志向の若者にフォーカス

「移住者を受け入れる」ではなく、「地元で何かやりたい」と思っている若者に向けて発信します。

直売所での顔出しや、学校の実習などの受け入れなど小さな接点を増やすことが、採用につながる種まきになります。

直売所などは意外と若い人が買いに来てくれたりします。実際に白葱農家の作業風景にふれてもらい農家を身近に感じてもらえることが重要。

 

2. 働き方の魅力を明文化し、発信する

  • 完全週休2日制

  • 有給取得自由

  • 残業ほぼゼロ

こういった“制度”は、実は小さな農園でも実現可能です。そして、この働きやすさが最大の差別化になります。

「休みが取りやすい農家」として評価されることが、採用力そのものになるのです。

 

3. 求人票ではなく、日常の発信で伝える

Instagramやブログ、noteを使って、農園の日常やチームの雰囲気を発信しています。

  • 実際にどんな作業をしているのか

  • どんな方たちが働いているのか

  • 新人スタッフの声など

こうしたリアルな日常を発信することで、応募前から「ここで働きたい」と思ってもらえるようになります。

 

4. 面接は“価値観のすり合わせ”の場に

履歴書の文字よりも、「この人と価値観が合うかどうか」を最も重視しています。

そのため、一次面接では「雑談しかしない」こともあります。むしろ、その雑談こそが一緒に働くうえでの空気感を確認する重要な時間です。形式ばった面接では見えてこない、その人の人柄や言葉のリズム、反応の丁寧さなどを感じ取るようにしています。

また、こちらからも「この農園が大切にしていること」や「過去にうまくいかなかった事例」なども率直に伝えます。それに対してどう感じるか、どんな返答が返ってくるかが、実は最も大切なポイントだったりします。

お互いにとってのミスマッチを防ぐための“対話の場”として、面接を位置づけることが、長く働ける人材と出会うための大きな鍵になるのです。

 

5. 少人数だからこそ、“一人ひとりが主役”になれる

後藤農園では、「役割の幅が広い」ことがやりがいになります。作業だけでなく、商品企画・お客様対応・SNS発信まで、希望があればどんどん任せています。

「自分がこの農園の一部を担っている」と実感できる環境があることで、働くモチベーションも変わってきます。単なる“労働力”としてではなく、「チームの一員」「農園の未来をともにつくる仲間」として関われるのは、小規模組織だからこその魅力です。

さらに、挑戦したいことがあれば柔軟に取り入れる風土があり、若手でも自分のアイデアが形になる経験を積むことができます。こうした「個の力を活かせる組織づくり」は、採用にも大きな武器になると感じています。


 

「選ばれる農園」になるために

小さな農園が採用で勝つためには、“全員を狙う”のではなく、“来てほしい人だけ”に情報を発信し続けることが重要だと考えます。すべての人に届く発信は、誰にも深く刺さらないものになりがちです。だからこそ、自分たちが「一緒に働きたい」と心から思える人にだけ響くメッセージを考える必要があります。

たとえば、農業に対する情熱がある人だけでなく、土に触れることの意味を考えたり、仲間との信頼関係を大事にできる人。そうした人たちに向けて、自分たちの価値観や働き方を丁寧に発信していくことで、共鳴してくれる人と出会える確率が高まっていきます。

  • 共感してくれる人

  • 一緒に成長したいと思ってくれる人

  • 働くことにやりがいを感じたい人

  • 結果よりもプロセスに価値を感じられる人

  • チームの中で役割を持ち、自分の意見を発信できる人

発信や面接の中であえて正直に「大変なところ」「向いていないかもしれない部分」も伝えるようにしています。そうすることで、お互いにとって無理のない関係を築く第一歩になります。

そういう人たちに絞って発信し、選ばれる存在になる。これが、後藤農園が実践してきた「ランチェスター採用戦略」です。


 

おわりに:農業は“人づくり”の現場でもある

作物を育てるには時間がかかります。

土づくり、種まき、発芽、成長、収穫──すべての工程に手間と時間がかかり、ひとつでもおろそかにすると、良い作物は育ちません。これは人材育成にもまったく同じことが言えます。

人を育てるのにも、同じくらい、いやそれ以上の根気と覚悟が必要です。最初はぎこちなくても、少しずつできることが増えていく。何度も失敗し、周囲に支えられながら成長していく。その過程を見守るのもまた、私の大切な仕事のひとつです。

でもその分、誰かが本当の意味で根づいてくれたとき、農園は信じられないほどの力を発揮します。一人の存在が、チームの雰囲気を変え、生産性を底上げし、お客様との信頼関係さえも強めてくれる──そんな瞬間が、本当にあるのです。

農業は、単なる“仕事”ではなく、“生き方”そのものだと思う。そして、人と人が向き合い、共に働くことは、生き方そのものを分かち合うことでもある。

だからこそ、価値観を共有できる仲間と、安心して長く働ける環境をつくっていくことが、農園の未来をつくる礎になります。

それが、僕が「採用」というテーマで最も大切にしていることです。

 

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