「農薬って、なんか怖い」──その感覚、実は自然です

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農業ブログ

安心して食べるために──“残留農薬の不安”に農家ができる答え

2025/06/13

安心して食べるために──“残留農薬の不安”に農家ができる答え

野良哲人☆農人クリエ

農薬、と聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?
危なそう、体に悪そう、子どもには食べさせたくない──
そんなふうに思うのは、とても自然な感覚です。

 

だって、“農薬”という言葉には、「薬」と「農業」のどちらにも、

知らない人には見えない“裏側”があります。
そして私たちは、その裏側をちゃんと伝える努力を、

今まであまりしてこなかったのかもしれません。

 

 


「野菜の安全」のために、実は農薬を使っている

農薬は、野菜を“守るため”に使います。
言い換えれば、「野菜が無事に育つこと」そのものが、

すでに奇跡のような話なんです。

野菜のまわりには、想像以上にたくさんの敵がいます。
虫、菌、ウイルス、カビ、雑草

──これらが一気に攻めてきたら、た

った一晩で畑が全滅することだってある。
そのとき、農薬は“盾”になります。

私たち農家が農薬を使う理由は、「効率」ではありません。
“安定して作り、届ける”という社会的な責任のためなんです。

 

 


安全基準って、どう決められてるの?

──すべり台でわかる、100倍の余裕設計

「農薬には“国の基準”があります」──そう聞いても、ふつうはこう思いますよね。

「その“基準”って誰がどう決めてるの?」
「なんでそれで“安全”って言い切れるの?」

わたしも最初はそうでした。
だから、ここでちゃんと説明しておきたいんです。

 

 

▶ 科学者たちは、まず“ギリギリの安全ライン”を探す

農薬は、最初にマウスやラットなどの動物実験で、

「この量までなら体に害が出なかった」という数値を出します。
これを**NOAEL(ノーエル:無毒性量)**と呼びます。

でも、それを人間にそのまま当てはめたらダメですよね?

  • 人間と動物では体の構造が違う

  • 人によって体質も違うし、子どもや高齢者、妊娠中など影響を受けやすい人もいる

だから科学者たちは、そこに“10倍”の安全幅をかけます。

 

 

▶ さらにもう10倍、「もしも」のために

「まだ足りないかもしれない」
そう考えて、さらにもう10倍

つまり、
10(動物と人間の違い) × 10(人間同士の差)=100倍の安全マージンをかけて、
ようやく「これくらいまでなら大丈夫ですよ」という摂取量(=ADI)を決めているんです。

 

 

▶ たとえるなら、公園のすべり台

この「100倍の余裕」って、聞いてもまだ実感しづらいですよね?
だから、こんなたとえ話を。

 

公園のすべり台が「100kgまで耐えられます」と設計されているとします。
でも、実際に遊ぶのは20kgくらいの子ども。
→ つまり、“100kgまでOKなものに、20kgしか乗せない”くらいの余裕設計なんです。

 

 

農薬の安全基準も、まさにこれと同じ。
“限界ギリギリ”じゃなく、

**「安全すぎるくらいでちょうどいい」**

を前提に設計されているんです。

 

 


実際どれくらい食べても大丈夫なの?

じゃあ、私たちが毎日食べている野菜には、

どれくらい農薬が残っているのか?

たとえば、体重50kgの人が食べても大丈夫とされる量は──
ある農薬では、1日5mgまでOKと決められていたりします。

 

 

仮にネギ1kgに農薬が3mg残っていてもOKとされていた場合、
1.6kg(=ネギ15~16本分)を毎日食べても大丈夫な計算です。

 

でも実際には、出荷されているネギの残留量は、その1/10〜1/100以下がほとんど。

「100kgまでOKなすべり台に、10kgの子が乗ってる」くらいの世界です。

だからこそ、「毎日食べてもまず問題はない」と言えるんです。

 

 


食べ方でもリスクはさらに減らせます

それでも、「ちょっと気になるな…」という方には、
こんな食べ方の工夫がおすすめです:

方法 理由
✅ 茹でて茹で汁を捨てる 水溶性の農薬が流れ出す
✅ 加熱する 一部の農薬は熱で分解される場合あり
✅ 外皮をむく 特にネギは、これで大部分が除去される
✅ 食べすぎない 安全でも、“ほどほど”が大事

白ネギは皮をむいて出荷するため、
もともと残留リスクが低い野菜でもあるんです。

 

 


「無農薬=安全」とは限らない時代へ

「農薬を使わないほうがいいんじゃないの?」
そう思う気持ち、よくわかります。

でも現実には、農薬を使っていなくても、
空気には工場の煙、車の排気ガス、雨に含まれる化学物質、
さらには近隣の畑から飛んでくる農薬もある。

“無農薬”=“ゼロリスク”ではないんです。

安全かどうかを決めるのは、「使っている/いない」よりも、
「どう向き合っているか」だと、私は思っています。

 

 


私たちは、“農薬と正面から向き合う農業”を選びました

後藤農園では、病気予防のために農薬を使うことがあります。
でもそれは、やみくもにではありません。

 

たとえば、土を健やかに保つために、

菌根菌(G2資材)や“バイオスティミュラント資材”

の活用も視野に入れています。


これは、

植物の根や葉に刺激を与えて、

本来持っている力を引き出す“自然由来の応援アイテム”のようなもの。
病気に負けにくい環境づくりを支えながら、

農薬に過度に頼らなくていいように、バランスを考えて導入しています。

 

それは、見えない部分にこそ、安心を積み重ねたいから。

 

 


最後に──「安全」はゼロではなく、“余裕の積み重ね”

農薬は怖い。
でも、それ以上に、「知らないまま避けること」の方が私は怖い。

だから私は、農薬を“否定”でも“肯定”でもなく、
「正面から向き合うもの」として語りたかったのです。

安全とは、「ゼロにすること」ではなく、
“100倍の余裕をもって守ること”

私たちは今日も、ネギとともに、余裕を積み重ねています。

 

 

野良哲人☆農人クリエが綴る
「あなたが“なんとなく”不安に思っていたことに、そっと説明を添えたかった」
今日も、土の中では静かに命の会話が交わされています。

 


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