二つの種、三つの使命 — 内なる声に従う旅
2025/08/16
内なる願い
二つの種、三つの使命 — 内なる声に従う旅
温かい土のベッドに、二つの小さな粒が並んで眠っています。
白ごまのシロと、黒ごまのクロ。
硬い殻の奥で、二人はそれぞれの内なる声を聴いていました。
「私は、誰かを幸せにする甘く香ばしい香りを放ちたい」──シロ
「俺は、誰かの体を支える力強い栄養になりたい」──クロ
その上には、一人の農家さんがいます。
彼もまた、自分の内なる声に導かれていました。
「ただ、良いゴマを作りたい。それだけだ」
それぞれが期待に胸を
弾ませているようです。
芽吹きと試練
7月初旬、土が朝露をまとい、空気が少し湿った日。
たっぷりの水が与えられ、二つの種は硬い殻を破って芽を出しました。
でも自然は優しくありません。
真夏の乾燥、強風、葉っぱを食べる虫や養分を吸う虫。
時には、雨がしばらく降らず、乾燥が続き葉先がしなだれます。
「この壁を超えないと、私の使命は果たせない」──シロ
「立ち止まったら終わりだ、伸び続けるんだ」──クロ
葉色や茎の伸び方を見て水をやり、虫を払い、草を刈る。
作業はマニュアルではなく、ゴマと対話する感覚でした。
使命が花開く夏
茎は1メートルを越え、下から順に淡いピンクの花が咲きます。
その姿は、まるでトレニアのよう。
花が落ちたあと、細長い鞘が少しずつ膨らみ始めました。
シロは、甘く香ばしい香りのもととなる油分をため込み、
クロは、力強い栄養と健康を支える成分を蓄えます。
それぞれが、ただ「そうしたいから」と
全力で前に進んでいました。
収穫と別れの秋
秋風が吹き、鞘が黄色く色づくと、いよいよ旅立ちの時。
農家さんは株を根元から刈り、5〜10本ずつ束ねて逆さ吊りにします。
乾燥後はふるいや風選で軽いゴミを飛ばし、
最後はテーブルの上で手選別。小石や不良粒をピンセットで取り除く。
それは手間の塊。
でも、
この一粒を最高の状態で送り出すための儀式。
「さあ行こう、クロ」
「おう、シロ。俺たち、やり切ったな」
乾燥が終わり殻が弾ける瞬間、シロはふわっと甘い香りを、
クロは香ばしく深い香りを放ちました。
その先へ
二つの種は袋に詰められ、どこかの食卓へ向かいます。
香りをまとったシロは、和え物の仕上げに。
力強いクロは、黒ごまプリンやパン生地に。
彼らはもう知っています。
自分の内なる声に従って進めば、
必ず誰かの笑顔につながることを。
そして農家さんも知っています。
この喜びがあるから、また種をまくのだと。
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