変わりゆく気候、変わらない覚悟──白ネギ品種試験

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農業ブログ

変わりゆく気候、変わらない覚悟──白ネギ品種試験

2025/04/19

答えはどこにもない。だから自分で試す

本日、埼玉の種苗会社の方と話す機会があった。話題は自然と、白ネギと、ここ最近の気候についてだった。

「昔に比べて、夏が長くなったよね」 そんな一言に、僕は強くうなずいた。ここ数年、日本の夏、静岡の夏は明らかに変わっている。栽培現場に立っていれば、誰でも肌で感じているはずだ。

静岡の秋冬ネギ栽培は、昔から「定植して6ヶ月後に収穫」が基本だった。そのサイクルだと、必ず夏を越さなければならない。これまでも「どう夏を乗り切るか」がテーマだったが、今や「耐える」だけでは足らない。夏は、年々、長く、厳しく、そして手強くなっている。

だから考え方を変える必要がある。

 

夏を「乗り越える」のではなく、できるだけ「避ける」。

 

定植を遅らせ、栽培期間を短縮し、秋から冬にかけて一気に仕上げる作型へとシフトしていく。

たとえば、7月下旬に定植して翌年1月に収穫する。あるいは、9月に定植して1月下旬に収穫する。そんな「短期決戦型」のサイクルだ。

 

夏を迎える前に白葱を育てすぎてはならない。

立派な状態で夏を迎えてはならない。

 

夏越しの基本、生かさず殺さず。

 

もちろん、作型を変えるだけではうまくいかない。それに対応できる品種が必要だ。

夏前に育ちすぎず、コンパクトなまま高温期を乗り切り、秋以降にスイッチが入ったように太っていく。そんな「追い込み型」のネギ。

今回、種苗会社さんから提案された品種は、まさにそういった特性を持っていると聞かされた。他産地ではすでに実績があり、「夏前に暴れず、夏越し後に力強く回復する」という。

この種苗会社さんは、定期的に訪問していただき、関東地域を含むさまざまな生の情報を共有させさせていただいている。現場感のある生きた情報を届けてもらえることは、日々の厳しい栽培環境の中で判断するにあたり非常に重要だ。

ありがたいことに、これまでに何度も種子を提供して頂いている。せっかくの機会だから、本気で取り組む。10aから20aくらいで、実戦レベルの試験を行う。

実は、今回試す品種は、過去に一度栽培したことがある。当時とは気候も違えば、自分自身の技術も違う。ただ懐かしむためではなく、今、このタイミングで、改めて向き合う意味があると感じた。

ここでひとつお断りしておきたい。今回試験する品種については、あえて名前は明かさないことにする。というのも、品種というものは、地域が変わり気象条件が大きく変わることで、どこで作っても同じように結果が出るわけではないからだ。東北、関東、九州、そして静岡などでは気温をはじめ日照時間や降水量がまるで違う。バイアスを与えず、あくまで「試験のプロセスと考え方」を共有したいと考えているためだ。

試験にあたって大事にしたいのは、「自分の圃場で、自分の目で確かめる」ということだ。

どれだけカタログに素晴らしいことが書いてあっても、どれだけ他産地で成功していても、自分の畑で、静岡の気候の中で、どうなるかは別問題だ。

 

初期の立ち上がりはどうか。夏越し後の葉の傷みはどうか。秋の肥大スピードは。収量、品質、皮むき時の皮離れや葉切りしたときの水分量、そして全体の収益性。一つひとつ、冷静に見極めていき総合力で判断しなければならない。

 

試験は、成功しても失敗しても、意味がある。成功すれば新しい道が拓けるし、たとえ失敗しても、「なぜダメだったか」を学べば次につながる。試すことをやめた瞬間、農業者としての成長も止まってしまう。

いま、農業界には本当にさまざまな情報が飛び交っている。新技術、新品種、新たな栽培方法。便利そうに見えるもの、革新的に見えるもの、次々と紹介される。けれど、何を選び、どのように活かしていくかは、結局、自分自身が判断しなければならない。

情報の多さに振り回されていては、どれだけ新しいものを取り入れても本当の意味では前に進めない。

「みんながやっているから」という理由で選べば、他と同じ結果にしかならない。「誰かがいいと言ったから」という理由で飛びつけば、もしうまくいかなかったときに納得できないだろう。自分の農業、自分の未来を、他人の判断に預けてしまうことほど怖いものはない。

だからこそ、自分で試す。自分の手を動かし、自分の目で確かめ、自分の頭で考え、自分の心で納得して決断する。試す中で感じる違和感、見えてくる小さな変化、そのひとつひとつが、自分だけの答えを導き出す手がかりになる。未来を誰かに委ねるのではなく、自分の手で切り拓く。その覚悟が必要だと思っている。

挑戦とは、派手なものばかりではない。こうした一見地味で、手間のかかる試験の積み重ねが、自分自身の農業を確実に強くしていく。成功すれば自信になり、失敗すれば学びになる。どちらに転んでも、得られるものがある。試験を重ねることで、自分だけの経験と判断基準が着実に積み上がっていくのだ。

種を蒔くたびに、未来を蒔いている。畑に立つたびに、自分に問いかけている。「これでいいのか」と。そしてまた、心を込めて種を蒔く。今年もまた、新しい挑戦を始める。未来は、誰かから与えられるものではない。自らの手で育て、汗を流し、悩みながら歩むものなのだから。

 

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