「農協=悪」じゃない。
2025/04/27
農協とともに歩んできた私の農業
■ はじめに:「農協って悪なんですか?」
ここ最近、ネットやSNS、農業系のYouTubeなどで「農協はやめとけ」とか「農協は搾取してくるだけ」といった意見をよく見かけるようになった。
共販出荷の価格の不透明さ、手数料の高さ、組織としての古さなど、そう言われる理由もわかる。私自身も、現在は農協には共販出荷していない。自分の販路を持ち、自分のルールで商売をしている。
だけど、「農協=悪」と一括りにする言い方には、どうしても違和感がある。
なぜなら、私は農協という組織がなければ、そもそも農業を始めることすらできなかった人間だからだ。
私のような方は、いっぱいいらっしゃるのではないでしょうか。
そして今でも、農協とは前向きなかたちで関係を続けている。
今日はそのことを、自分の体験をもとに、正直に書いてみたい。
■ 農協という組織がなければ、農業は始められなかった
私が農業を始めたのは15年前。
農家の出身でもなければ、農業の知識も人脈もゼロの状態だった。右も左も分からない中で、最初に相談に乗ってくれたのが、地元の農協の事業所長さんだった。
「この作型ならこの品種が良いよ」
「この作型なら割と手がかからないから始めやすいよ」
そんなアドバイスを受けて、まずは小さく白ネギの栽培をスタートした。
圃場の紹介、苗や肥料の手配、施肥設計や防除暦の提供。
そして要となる農業機械の購入先の紹介など。
それらを一通り整えるために動いてくれたのも、農協だった。
そして何よりありがたかったのは、作った白葱は全量買い取り。
そして私の地域では白葱栽培が当時から盛んであったため泥付きで出荷することができた。白葱は収穫後の作業負担が著しく高い。皮をむき選別し、それを各サイズごとに結束したのち箱詰めをする。この一連の作業が白葱を栽培するうえで高いハードルになる。
こういった作業を農協が請け負ってくれたおかげで出荷でき、売上が生まれ、次の一歩が踏み出せた。
農協がいてくれたから、僕は「農家」になれた。
■ 今でも農協とは付き合っている。実はけっこう前向きに
現在、僕は農協には共販出荷はしていない。
※共販出荷については、後日詳細を解説していきたいと思っているのでここでは割愛する。
だからといって農協との関係が終わったわけではない。むしろ、今の方が「ちょうどいい距離感」で付き合えていると感じている。
たとえば、資材や肥料の購買は今でも農協経由で行っているものもかなりある。
営農担当の方からは、毎年のように、新品種の紹介、肥料農薬をはじめとする資材の提案、最近の気象条件を乗り越えるためのバイオスティミュラントの提案や試験サンプルの提供など、メーカーとのパイプ役も担っていただいている。
それを聞いたうえで、自分に必要なものを取捨選択している。
そして実は、出荷も“ゼロ”ではない。
農協から提案された契約出荷や指定先への販売など、価格や条件に納得できるものに関しては積極的に出荷しているし、価格交渉も都度行っている。
つまり、農協との付き合いは「ゼロか100か」じゃない。
共販には出していないけれど、“自分の判断で選んだ”農協出荷は今も続けている。
■ 「農協を使う=依存」じゃない。農家の主体性が大事
農協との関係を語るとき、よく出てくるのが「依存」という言葉だ。
たしかに、すべてを農協任せにして「考えることを放棄する」のなら、それは依存と言われても仕方がない。
でも、私がしているのはそうじゃない。
農協から情報や提案を受ける。
でも、最終的にそれを採用するかどうかは自分で判断する。
良さそうなら試してみるし、合わないと思ったらやらない。
要は、「農協と主体的に“取引している”状態」なんだと思う。
農協=情報の窓口であり、選択肢のひとつ。
自分の農業をより良くするための“ツール”のひとつとして、僕は農協を活用している。
■ 農協は敵じゃない。人と組織は分けて考えたい
農協には確かに古さもあるし、柔軟性が足りない部分もある。
共販出荷や営農体制に疑問を感じることもあるし、共販出荷が戦後の日本の食卓を守ってきた仕組みであることは私も承知しているが、野菜の販売も多様化してきていることを考えると、変わらなければならない時期であることは明白だ。
でも、それと「農協に関わるすべての人」を一緒くたにするのは違うと思う。
僕が15年前に出会った所長さんも、今購買を担当してくれている方、出荷担を担当してくれている方、みんな「農家の力になろう」と動いてくれている。
忙しい中でも、現場に足を運び、試作の様子を見に来てくれたり、新しい情報を持ってきてくれたり。
そういう“人の顔が見える関係”が、農協にはある。
農協は巨大組織だけど、その中には“人”がいる。
その人たちと信頼関係を築ければ、農協はとても心強い存在になる。
■ おわりに:農協と農家がともに変わっていける時代へ
私たちは今、農業のあり方を自分で選べる時代に生きている。
販路も、資材も、情報源も多様になり、「農協とどう付き合うか」も、農家一人ひとりが決められる。
農協と距離を取るのも自由。
でも、使えるところだけ上手に使うという柔軟な付き合い方もある。
僕はこれからも、農協をリスペクトし、そして「必要なときに相談できるパートナー」として付き合っていくつもりだ。
おそらく共販出荷は今後もしないだろう。でも、価格や条件に納得できる出荷形態の提案をいただければ、農協出荷も積極的にしていく。
そんな“現実的な関係”を築いていくことこそが、農家にとっても農協にとっても、未来につながる道だと思っている。
そして、こういうスタンスの農家が増えていけば、農協もまた、組織としてのあり方を問われ、変わらざるを得なくなる。
それは対立ではなく、進化のきっかけだ。
農家も農協も、共に変わっていけるなら、農業の未来はもっと面白くなる。
私は、そう信じている。
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