収穫翌日と1ヶ月後、焼き芋の甘さはどれだけ違う? 水と塩水でも比べてみました【さつまいもの検証・第3回】
2026/10/25
後藤農園|さつまいもの検証・第3回
収穫翌日と1ヶ月後、焼き芋の甘さはどれだけ違う? 水と塩水でも比べてみました

さつまいもの検証、今回で3回目です。
前回は、焼き方を変えたり、冷ましたり、温め直したりして、糖度計の数値や食感を比べました。
前回の「紅はるかの焼き方比較実験」はこちら
今回は、もっと基本のところを確かめます。
収穫から1日置いた芋と、1ヶ月以上置いた芋。糖度には、どのくらい違いがあるのだろう?
さらに、水につけたら食感はどうなるのか。塩水につけたら、食べたときの甘さの感じ方も変わるのか。こちらも一緒に試してみました。
まずは、4つの条件で比較
収穫から1日経ったものと、1ヶ月以上経ったものを、それぞれ2本ずつ用意しました。
- 収穫1日後・そのまま焼く
- 収穫1日後・真水に5時間、その後に塩水に1時間つけて焼く
- 収穫1ヶ月以上・そのまま焼く
- 収穫1ヶ月以上・真水に5時間、その後に塩水に1時間つけて焼く
日数による糖度の違いを見ることが、今回の中心です。水につける処理では、主に食感と味わいの変化を見ていきます。
1ヶ月以上置いた芋は、数字にも差が出た
焼いた芋を水で5倍に希釈し、糖度計でそれぞれ4回計測しました。
| 条件 | 測定値の平均 | 5倍換算値 |
|---|---|---|
| 1ヶ月以上・そのまま | 9.83 | 49.13 |
| 1ヶ月以上・真水+塩水 | 9.43 | 47.13 |
| 1日後・そのまま | 5.90 | 29.50 |
| 1日後・真水+塩水 | 5.43 | 27.13 |
※それぞれ4回計測した平均値です。5倍換算値は、測定した平均値に希釈倍率の5を掛けたものです。換算値は比較の目安で、芋全体に含まれる糖の割合をそのまま示すものではありません。
そのまま焼いたもの同士で比べると、換算値は収穫1日後が29.50、1ヶ月以上置いたものが49.13。
今回の芋では、収穫後の日数による差がはっきり出ました。
参考に、業務スーパーのシルクスイートも測ってみた
業務スーパーで買ってきたシルクスイートも、同じく5倍に希釈して4回計測しました。
測定値の平均:10.63
5倍換算値:53.13
今回の1ヶ月以上置いた芋をそのまま焼いたものは、5倍換算で49.13。購入したシルクスイートは、それより高い値でした。
ただ、購入品は収穫後の日数や保存条件が分かりません。この数字だけで品種の優劣を決めず、今回測った購入品の参考記録として残します。
水につけると、しっとり。でも、味わいは?
1ヶ月以上・そのまま焼いた芋
甘みと旨味がありました。単にしっとりというより、ねっとり感のあるしっとり。食感もしっかりしていて、今回いちばん好みだったのはこちらです。
1ヶ月以上・真水と塩水につけた芋
水分が多い印象でした。しっとりした中に少しねっとり感もありますが、そのまま焼いたものに比べると、味が少し薄く感じられました。
収穫1日後・そのまま焼いた芋
甘さも若干感じられ、ホクホク、ほっくりした食感でした。これも、まあまあ美味しい。
収穫1日後・真水と塩水につけた芋
こちらは水分感が強く、味がぼやけた印象。薄味に感じられました。
水につけたから美味しくなる、とは簡単には言えません。今回は、しっとりする一方で、甘みや旨味の印象が弱く感じられる仕上がりでした。
条件を伝えず、別の人にも食べてもらった
自分だけの感想なのかも確かめたくて、別の人にも条件を伝えずに食べてもらいました。先に出したのは、収穫1日後の芋です。
感想は、おおむね同じでした。水につけたものは水分が多く、甘みや旨味が控えめに感じられる。1ヶ月以上置いたものをそのまま焼いた方が、食感も含めて焼き芋らしく、美味しいという評価でした。
もちろん、少人数の食べ比べです。それでも、測定値だけでは伝わらない違いを、ほかの人も感じたことが印象に残りました。
塩水の効果は? 今回は、真水が長すぎたかも
塩水につけることで、甘さの感じ方が変わるのか。これも試したかったのですが、今回は塩水の効果をあまり感じませんでした。
その前に真水へ5時間。食べた印象では、すでに水分を十分含んでいるように感じられました。ちょっと、つけすぎたかな。というのが正直なところです。
ただし、水や塩が実際にどれだけ入ったかは測っていません。「水を含んだから塩水が入らなかった」とまでは言えませんが、今回目立ったのは、塩水による甘さの変化より、水につけたことによる食感と水分感の変化でした。
次は、真水につける時間を短くするか、最初から塩水につける条件と比べてみると、もう少し違いを見やすくできそうです。
甘さは、糖度計の数字だけで決まらない
前回は、温かい状態、冷ました後、温め直した後で、糖度計の数値が変わりました。今回は、水につけたものと、そのまま焼いたもので、数値の差以上に味わいが違って感じられました。
ここで気になるのが、舌の働きです。
甘さは、糖が唾液に溶け、舌の味細胞にある甘味の受容体に届くことから始まります。味細胞の反応は、ATPという伝達物質を介して味覚神経に伝わり、脳で甘さとして感じられます。[1]
温度は、この味細胞が反応する仕組みに関わります。細胞とマウスの研究では、甘味の信号を生む過程にあるTRPM5というタンパク質の働きが温度で変わることが示されています。人でも、冷却によって甘さが弱くなる条件が確認されています。ただし、糖の種類や温度によって結果は異なります。[2][3]
一方、水分感や食感については、まず口の中で糖がどう届くかが気になります。噛んだときの崩れ方、唾液との混ざり方、口の中に残る状態などが、甘さの感じ方に関わる可能性があります。ゼリーを使った研究では、食品の構造によって、糖の放出量に差がなくても感じる甘さに差が出た例があります。[4]
温度と水分が、まったく同じ仕組みで作用しているわけではありません。でも、糖の量だけでなく、舌に届くまでと、舌が反応する過程にも目を向けると、今回の違いも面白く見えてきます。
今回の芋で神経の反応を測ったわけではなく、糖度計の数値だけで糖の総量が同じとも断定できません。水分感や食感が、味わいの違いにどう関わったのか。これは、次の検証でも追ってみたいところです。
切るときにも、小さな違いがあった
生の芋の端を切ったとき、収穫1日後のものはシャキシャキした感触がありました。1ヶ月以上置いたものは、包丁を入れると少し抵抗感がありました。
測定のために焼いた芋を水に混ぜたときも、収穫1日後のものはサラッと混ざり、1ヶ月以上置いたものは混ざりにくく感じました。
こうした手応えも含めて、実際に比べてみると気づくことがあります。
今回の芋では、1ヶ月以上置いたものの方が高い測定値になりました。
そして食べて好みだったのは、1ヶ月以上置いた芋を、そのまま焼いたもの。
しっとりしていれば、それで美味しいとも限らない。焼き芋は、数字と食感を一緒に比べると面白いですね。
※各条件1本での検証です。4回計測した値は同じ条件の芋の測定であり、4本ずつ比較したものではありません。今回の数値と感想は、使用した芋と測定方法で得られた結果です。
今回の検証の写真
測定写真は1回分の表示例です。本文の表には4回の平均値を掲載しています。








